◇1 おすすめの本:命の器【宮本輝】

    就職試験の三次面接で、「あなたに最も影響を与えた本は何か」と聞かれ、パンダブは宮本輝氏の『命の器』をあげました。

    高校生の時に初めて読み、魂を揺さぶられた本。氏のエッセイ集になりますが、表題のこの話が、ストンと胸に落ちてきた感覚がありました。

    面接官に対し、「この会社が私にとっていい出会いであるかは私次第だということです。」とかなんとか言った気がする…。生意気にも。

    採用してくれた会社には感謝しかありません…。

    しばらく読み返してなかったのですが、最近の新型コロナウイルスの影響で、仕事というもの、人間というもの、自分というものを考えることが多くなり、ふと思い出して手に取ってみました。

    表紙の四隅はボロボロに、ページは茶色く変色していました。奥付を見ると、1996年となっていたので仕方ないですね。

    命の器の奥付。1996年3月29日第26刷発行となっている

    運の悪い人は、運の悪い人と出会ってつながり合っていく。

    【中略】

    どうしてあんな品の悪い、いやらしい男のもとに、あんな人の良さそうな美しい女が嫁いだのだろうと、首をかしげたくなるような夫婦がいる。しかし、そんなカップルをじっくり観察していると、やがて、ああ、なるほどと気づくときがくる。彼と彼女は、目に見えぬその人間としての基底部に、同じものを有しているのである。それは性癖であったり、仏教的な言葉を使えば、宿命とか宿業であったりする。

    それは事業家にもいえる。伸びて行く人は、たとえどんなに仲がよくとも、知らず知らずのうちに落ちて行く人と疎遠になり、いつのまにか、自分と同じ伸びて行く人とまじわっていく。不思議としか言いようがない。企(たくら)んでそうなるのではなく、知らぬ間に、そのようになってしまうのである。抗(あらが)っても抗っても、自分という人間の核を成すものを共有している人間としか結びついていかない。その恐さ、その不思議さ。私は最近、やっとこの人間世界に存在する数ある法則のひとつに気づいた。「出会い」とは、決して偶然ではないのだ。でなければどうして、「出会い」が、ひとりの人間の転機と成り得よう。

    私の言うことが嘘だと思う人は、自分という人間を徹底的に分析し、自分の妻を、あるいは自分の友人を、徹底的に分析してみるといい。「出会い」が断じて偶然ではなかったことに気づくだろう。

    【中略】

    どんな人と出会うかは、その人の命の器次第なのだ。

    出展元:宮本輝「命の器」より

    魂を揺さぶられてから20年以上が経ちました。そして今、読み返しても、その感覚は変わりません。そしてパンダブはいつも、この「命の器」という言葉を頭の片隅に置きながら日々を暮らしています。

    外出自粛がいわれている中、毎日の生活で何かを犠牲にしている人が多いと思います。仕事で大変な思いをしている方も、学校に行きたい子ども達も。

    静かなところで、ほんの少しの時間でも、本を読むのはどうでしょうか。

    おすすめです

    パンダブでした!

    スポンサーリンク

      コメントを残す

      メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です